江口
- 江口:観世・宝生・金春・金剛・喜多
- 能柄:三番目物・本かづら物・大小物
- 人物:前ジテ・里の女 唐織着流出立
- 後ジテ・江口の君の霊 壷折大口女出立
- ツレ(後) 遊女の霊 唐織着流女出立(紅入)
- ツレ(後) 遊女の霊 唐織脱下女出立(紅入)
- ワキ・旅の僧 大口僧出立
- ワキツレ・従僧 大口僧出立
- アイ・里の男
- 鑑賞
旅の僧が江口の里を通りかかる。ここは昔西行法師が雨宿りをしようとして遊
女に宿を借りようとした所である。西行が宿を求めると主の遊女が貸さなかっ
たので、西行が「世の中をいとふまでこそかたからめ仮の宿りを惜しむ君かな」
の和歌を送ってそこを去ろうとした所である。僧はこの西行の和歌を口ずさみ、
感慨にふけっている。そこに若い女が現れ、僧に向かってどうしてその西行の
歌に対する遊女の返歌を詠じないのかと問う。その主の遊女の歌は「世をいと
ふ人とし聞けば仮の宿に心とむなと思ふばかりぞ」という詠歌をであり、西行
が遊女の宿という「仮の宿り」に執着していることをたしなめた歌であった。
若い女は、僧に対し、自分がその昔の江口の遊女であると述べて姿を消す。
(中入り)
旅の僧が所の者に江口の遊女の故事を尋ね、最前の若い女の様子を述べる。所
の者はそれは江口の遊女の幽霊が仮に現れ、僧と言葉をかわしたのであろうと
言う。そして江口の遊女は本体が普賢菩薩であり、その姿を現すであろうから、
夜もすがら弔うと良いと勧めて去る。(間狂言)
僧が川沿いで一晩中弔っていると遊女が船で現れ、遊女の生活のはかなさと罪
深さについて歌う、その後遊女は舞を舞い、「面白や、実相無漏の大海に・・・」
という普賢菩薩が性空に示した句を述べ、普賢菩薩という本体を明らかにする。
そして船は白象に、自らは普賢菩薩として天に上って行く。