高砂(たかさご)
- 高砂:観世・宝生・金春・金剛・喜多
- 能柄:脇能物・男神物・太鼓物
- 人物:
- 前ジテ・木守りの老人[大口尉出立]
- 後ジテ・住吉明神[透冠狩衣大口出立]
- ツレ(前)・木守りの姥[水衣姥出立]
- ワキ・旅の神職[大臣出立]
- ワキツレ・同行の神職[大臣出立]
- 鑑賞:
九州阿蘇の宮の神主友成が京に上がる途中、播磨の高砂の浦に立ち寄る。す
ると松の木陰を清める老人夫婦に出会った。友成は老人夫婦に高砂の松とはど
の松をいうのかと問い、さらにその松の謂れと、高砂・住吉の松に相生の名が
ある理由を問う。老人はこの木が高砂の松であると教え、自分は摂津の住吉の
者でこの姥が当地の者だからいわれを詳しく知っているという。この夫婦が浦
山をへだてて住んでいるというのを神主は不審に思う。老人たちの説明による
と、妹背の中は住む所などにかかわりがなく、高砂の松と住吉の松も、相生の
松といって夫婦の松なのだという。この二つの松は、「高砂」が「万葉集」、
「住吉」が「古今和歌集」の二集にたとえられ、松の葉の栄えは和歌の言の栄
えを意味し、つまりは天下泰平の象徴だというのである。老人はなお松の徳を
さまざまに物語り(クセ)、自分たちこそその松の精だと名を明かし、先に住吉
へ行って待っていると言い残して小舟で沖へ出てしまう(中入)。神主が浦の男に子細を尋ねると、男も松の
めでたさをたたえ、自分は舟を新造したので神職の方に乗りぞめをしてもらい
たいと頼む。(神主は現在の感覚と異なり特定の神社のもっとも身分の高い神
職である。この「高砂」はその「神主」観を背景にしている。)神主がその舟
で住吉へ行くと、住吉の明神(後ジテ)が現れる。明神は友成たちの前で壮快
な舞を舞い(神舞)、天下泰平を祝福する(ロンキ゛
)。