八島(やしま)
- 八島:観世・宝生・金春・金剛・喜多
観世は(屋島)と表記
- 能柄:二番目物・勇士物・大小物
- 人物:
- 前ジテ・老漁夫[着流尉出立]
- 後ジテ・源義経の霊[修羅物出立(平太)]
- ツレ・漁夫[水衣男出立(着流)]
- ワキ・旅の僧[着流僧出立]
- ワキヅレ・従僧[着流僧出立]
- アイ・屋島の浦人[長上下または肩衣半袴出立]
- 鑑賞:
旅の僧が屋島の浦へ赴くと、老人と若者の二人の漁夫がやって来るのに会い、
その塩屋に泊めてもらう。老人は僧に求められて源平の屋島の戦の話をする。
それは、ひときわ目立った義経の勇姿、悪七兵衛景清と三保谷四郎の 引きの
力競べ、主人をかばって敵の矢を受けて死んだ佐藤継信と菊王のふるまいなど
の話であった。語り終わった老人は、自分がその義経であることをにおわせて
消え失せる(中入)。僧は、塩屋の本当の持ち主
から老人は実は義経の幽霊であろうと言われる。夜半過ぎに義経の霊が昔の甲
冑を帯びた姿で現れ、屋島の戦のさまを物語る。義経は戦いのさなかに弓を海
中に取り落としたが、弱い弓であることを敵に知られないために、危険を冒し
て取り返したという(掛合・クセ)。そのうちに修羅
道の責め苦である戦いのときになり、義経は能登守教経を相手に激戦のていを
見せるが、夜明けとともに姿は消え去る(カケリ・中ノリ地)。義経が屋島の戦いの勝利者である
ことから、この能は修羅能の中でも「勝修羅」と呼ばれる。戦いの勝利者であっ
ても修羅道の責め苦を受ける所に、この能の特徴がある。