井筒(いづつ)
- 井筒:観世・宝生・金春・金剛・喜多
- 能柄:三番目物・本 物・大小物
- 人物:
- 前ジテ・里の女[唐織着流女出立(紅入)]
- 後ジテ・井筒の女の霊[初冠長絹女出立(紅入)]
- ワキ・旅の僧[着流僧出立]
- アイ・里の男[長上下出立]
- 鑑賞:
旅の僧が大和石上の在原寺を訪れ、在原業平と紀有常の夫婦亜が住んでいた
ところであることを述べ、感慨にふける。そこに若い女が来て荒れた古塚に水
を手向ける。女は僧にこれがこの寺の本願である在原業平の墓であると教え、
さらに業平と紀有常の恋物語を話して聞かせる。業平と有常娘が夫婦であった
時、業平が高安の女に通うようになったが、有常娘が「風吹けば沖津白波竜田
山」という業平のゆくえを心配する歌を詠み、業平がその歌によって「心とげ
て」高安の女に通わなくなったこと(サシ)、昔、宿を並べていた幼ななじみ
の二人が、幼い頃は井戸の水鏡に姿をうつして友達語らいていたが、やがて
「恥じかわしく」互いに疎遠になっていた。その後男が「筒井筒井筒にかけし
まろがたけ」という求婚のうたを詠み、女が「比べこし振り分け髪も」という
受諾の歌を詠み一緒になったことを語るのだった。(ク
セ)、やがてその女は紀有常の娘の霊だと名を明かして、かたわらの井筒
の陰に姿を消す(中入)。夜が明けると、紀有常
女は業平の形見の冠直衣を身に着けてふたたび現れ、舞を舞い(序ノ舞)、井戸の水鏡にわが姿を映して夫である業
平の面影をしのび、移り舞を舞うが(ノリ地)、夜
明けとともに消えていく。