清経(きよつね)
- 清経:観世・宝生・金春・金剛・喜多
- 能柄:二番目物・公達物・大小物
- 人物:
- 前ジテ・平清経[修羅物出立(中将・十六)]
- ツレ・清経の妻[唐織着流女出立]
- ワキ・淡津の三郎[掛素 大口出立]
- 鑑賞
平清経は源平の戦で西国へ都落ちした。清経の邸には、妻が人目をしのんで寂しく留守を守っている。そこへ夫の部下であるの淡津の三郎が来て、清経が自殺したことを告げ、その形見の遺髪を届ける。妻は、清経が戦いで死ぬこともせず自殺したことを恨み、形見を宇佐神宮に手向け返そうとする。(妻の歌:見るたびに心つくしの髪なれば宇佐にぞ返すもとのやしろに)泣き伏した妻のうたた寝の枕に、清経の霊が現れる。妻は、戦死か病死ならともかく、自分を置き去りにして自殺するとはと恨み嘆く。清経は、平家が宇佐八幡によって滅ぶことがさけられないという神託が下ったことと、その神託が源氏の追撃によって現実化しつつあることから、ついに死を決心したことを述べる。そして月の美しい夜を今様をうたい朗詠し、愛用の笛を吹き、この世とても夢であると悟って、念仏を唱えて舟端から身を投げたと述べる(クセ)。妻はなお清経との契りが「恨めしかりける契り」であったことを嘆くが、清経は(もし戦いで死んだならば修羅道に堕ちていただろうと)修羅道の有様を語り、自らが最期の十念のために仏果を得たことを述べて消える。(中ノリ地)。