実盛(さねもり)
- 実盛:観世・宝生・金春・金剛・喜多
- 能柄:二番目物・老武者物・太鼓物
- 人物:
- 前ジテ・老人[着流尉出立(唐人型。水衣は単法被にも。掛絡をかけ経巻持つ)]
- 後ジテ・斉藤別当実盛の霊[修羅物出立]
- ツレ・遊行上人[大口僧出立]
- ワキ・従僧(2,3人)[大口僧出立]
- アイ・篠原の里人[長上下出立]
- 鑑賞:
遊行上人他阿弥陀仏が加賀の篠原で説法をしている。その時、毎日聴聞に来
る老人があるが、その姿は上人以外の目に見えない。ある日上人が老人に正体
を問いただすと、老人はこの地で討死した斉藤実盛の故事を語る。そして自ら
がその斉藤実盛んの霊だと告げて去る(中入)。
上人が実盛のために法要を営むと、昔の戦陣の姿で実盛の霊が現れ、染めた髪
が洗われて白髪に戻った話(語り・上歌)、錦の直垂を着た話(クセ)、手塚たちと戦って討死した話(ロンギ・中ノリ地)
などを物語り、手塚にへだてられて木曾義仲と組み討ちで戦えなかった無念を
語り、なおも回向をたのんで消え去る。世阿弥時代の貴族の日記に他阿弥が篠
原で実盛の霊と逢い、十念を授けたという記事が書かれている。このことから
「実盛」は世阿弥が当時のニュースを能としたものと考えられる。「実盛」は
世阿弥の能作の理由を考察する上でも興味深い曲である。